配属希望の学生へ

電気電子工学科の3年生へ

 小川研究室の主な研究テーマは、電子デバイスに用いられている材料を他の材料に置き換えることで、より高性能な電子デバイスを開発できるようにすることです。そのための新しい材料を作るメカニズムを解明したり、材料の特徴を調べたりします。現在、パソコンや携帯電話などの電子機器にはケイ素(Si)を基板とした集積回路が組み込まれています。今後、電子機器の性能向上や消費エネルギー削減といった課題に対応するためには、これまでのSiデバイスの長所を生かしつつ新たな材料を取り入れたデバイスの開発が必要です。そのため、小川研究室ではグラフェンやダイヤモンドなどの炭素材料、電子回路の漏れ電流を抑制するための高品質SiO2膜の形成プロセス解明を進めています。

研究方法について

 これらの薄膜形成メカニズムを解明するために、研究室には光電子分光装置や4端子プローブ測定器などの分析機器、小川研が独自に開発を進めている光電子制御プラズマCVD装置などが設置されています(装置の測定原理や実際の使い方は研究室に入ってから丁寧に教えます)。しかし世界最先端の研究を行うためには市販の装置をそのまま使うだけではだめです。メーカーから装置を買ってきてすぐに世界最高の結果がでるなら、大学の研究は必要なくなってしまいます。そのため、自分たちの望む測定や薄膜形成ができるように装置を自作したり、市販品を改良する必要があります。そのためには電子工作や機械工作、プログラミングなどが必要とされ、皆さんがこれまで電気電子工学科で学習してきた知識が最大限に生かされます。

学生に望むこと

 これまで皆さんは電気電子材料や半導体デバイス、電磁気学の講義を通して電子デバイスに関する十分な知識を得ているとは思いますが、これらの知識に自信のない学生も心配いりません。小川研究室で行う卒業研究で必要な知識は、研究室配属後に卒業研究の一環として行う研究室ゼミを通して改めて丁寧に教えます。そのかわり、研究室で行うゼミには予習・復習をしっかり行うといった主体性を持って受講してください。

 また何事にも興味をもって取り組む姿勢を持ってください。私も学生の皆さんが興味を持てるような話題や実験を継続的に提供していきたいと思っています。興味を持ったらどんなことでも結構ですのでどんどん質問してください。

 卒業研究という科目は必ずしも研究者になる人だけに役立つわけではありません。研究を行うにあたり何がわかっていないのか調べること、自分ができる実験をデザインすること、段取りをつけて実験がスムーズに行えるように調整すること、得られた実験データをまとめること、得られた内容についてわかりやすくまとめて発表すること、発表した結果を他の人と議論すること、など卒業後に社会で必要とされる能力を鍛える場となります。ですので、社会にでる準備として卒業研究を存分に活用し、このような仕事スキルを磨いて社会人生活をスタートダッシュできるようにしてみてはどうでしょうか。

大学院進学について

 小川研究室では、卒業論文作製で行った研究をさらに発展させ、その研究を通じて『社会人/技術者として必要となる知識の習得方法を獲得すること』および『能動的・主体的な態度等を身につけること』が高いレベルで達成できるように、学生の皆さんには大学院への進学を強く勧めています。また、卒業研究は他大学・他研究室で行ったけれど、大学院から小川研究室へ進学したいという学生も歓迎いたします。研究室見学は随時受け付けていますので、気軽に連絡してください。

 大学院修士課程では上記の研究スキルをより高いレベルになるように指導します。現在、理系の技術職は修士の採用が多く行われていますが、これは修士論文にかかる研究活動を通じて、会社で必要とされるスキルが身に付くからです。このような高いスキルを身につけた学生は就職の心配をする必要がないと個人的には思っています。

 将来、研究者として活躍したいと考えている人には博士課程への進学も選択肢のひとつとなります。しかし博士課程への進学は、高いレベルの研究力(≠学力)と本人のやる気が必要です(これらに関しては主に修士論文で判断します)。博士課程で十分にやっていけると判断した場合のみ小川研究室で博士課程への進学を認めます。博士課程進学に際して、生活費や授業料に不安を持つ方も多いですが、在学中に日本学術振興会の特別研究員に採用されることもできます。特別研究員とは博士課程に学生として在籍しながら月額約20万円の給与を受け取れる制度です。学生支援機構の奨学金と異なり返済する義務がありませんので、安心して研究に打ち込むことができます。この特別研究員は研究業績(主に原著論文や国際会議発表歴)によって選考されますので、修士課程から(可能であれば卒業研究の時から)準備をしておけば採択される確率は大きくなります。そのため、博士課程へ進学したいと考えている学生は早めにその意思表示をすることが大切です。